イスラエルの起源について
旧約聖書の中で、「イスラエル」と呼ばれるようになったのは、いつごろでしょうか?
イスラエルとは、紀元前13世紀ごろにパレスチナに定着し、共通の神を礼拝することになった諸部族の宗教連合体のことだと言えますが、その成立過程ははっきりしません。
旧約聖書によれば、族長ヤコブがイスラエルという新たな名を神から与えられ、その十二人の息子がイスラエルを構成する十二部族の始祖となったとされています。その十二部族の名をリストアップする部族表は旧約聖書のさまざまな箇所に伝えられていますが、それらの部族表には無視できない違いが見られます。例えば、登場する部族名は一定ではなく、消え去る部族もあるし、列挙される部族名の順序もばらばらです。
しかも、族長の神は「主」ではなかった可能性すらあります。というのは、出6・2〜3で神はモーセに「わたしは主である。わたしは、アブラハム、イサク、ヤコブには全能の神として現れたが、主というわたしの名を知らせなかった」と述べているからです。「主」とは、ヤーヴェと発音されたのではないかと推測されるイスラエルの神の名前であり、この神への信仰がイスラエルをひとつの連合体へと束ねていきました。
出6・2〜3が史実を反映しているなら、族長が礼拝していた神は、少なくとも彼らの自覚においては「主(ヤーヴェ)」ではなかったことになります。さらに、約束の地への定着は部族によって異なっていたと推測させる記述もあります。したがって、「ヤーヴェを神とする十二部族の宗教連合体」としてのイスラエルが誕生したのは、約束の地に入った後、つまり紀元前13世紀ごろと考えられます。それ以前は、各部族は独自に行動していましたが、イスラエルという宗教連合体が、ヤーヴェへの信仰によって形成されたとき、過去の別々の歩みは実はヤーヴェがすべて導いていたのだとみなすようになり、それぞれの過去を共通の歴史として描き始めたのだと思われます。
十二部族による連合体としてのイスラエルは、政治的というよりは、宗教的であり、「イスラエルよ、聞け」という呼びかけを自己規定とする集団です。ですから、現在パレスチナに存在する「イスラエル」が、真のイスラエルであれば、今とは違った行動を取るのではないでしょうか。
●回答者=雨宮 慧 神父(東京教区)
「家庭の友」(2004年1月号から転載)
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