みことばの種を共有するという種 - これって、どんな種?

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井手口満修道士のこれって、どんな種?

みことばの種を共有するという種

年間第15主日(マタイ13・1〜23)



今のイスラエルの畑.jpgしっかりと耕されている、パレスチナ地方の畑 私は、三重県にある『アガペの家』という所で、茅や葛が生い茂った土地を刈って畑を作る手伝いや、耕された畑の畝にタマネギの苗を植え、また、サツマイモが大きくなるように根返しなどのお手伝いをしたことがあります。ここでのお手伝いを通して、私は、初めて野菜がどのようにして私たちの口に入るのかを少しだけ実体験を通して学ぶことができました。

 きょうのみことばは、【種まきのたとえ話】の場面で、種をまく人がそれぞれ、「道ばた、土の薄い岩地、いばらの間、そして、よい土地」に蒔くというたとえ話です。イエス様は、人々に話をする前に、ご自分の家から外に出て、湖のほとりに【座られて】いました。そこへ大勢の群衆が集まって来たので、イエス様は、舟に乗って【座られ】ます。マタイはユダヤ人たちが多くいる共同体でしたので、この【座る】という動作で、ラビたちが人々に教えを説くスタイルを入れたのでした。みことばは、「イエスはたとえでいろいろなことを語られた」とあります。イエス様は、きょうの【種まきのたとえ話】の他にもいろいろな【天の国の秘義】についての教えをたとえ話で説かれたのではないでしょうか。

 さて、きょうのみことばの【種まきのたとえ話】を聞くときに、疑問に思われる方もいることと思います。それは、普通は、しっかり畑を耕し作物を植える状態にしてから、種を均等に蒔いて行きます。そうすれば、道ばたや土の薄い岩地、いばらの間に種が蒔かれることも、種を無駄にすることもなく、効率よく作物を実らせることができるはずです。しかし、当時のパレスチナでの種まきは、まず、種を蒔いた後で耕すため、道ばたや土の薄い岩地やいばらの間にとりあえず蒔いたのでした。

ガリラヤ湖から岸を.jpg舟の上から見たガリラヤ湖と岸 イエス様は、人々が当然知っている種の蒔き方を用いてたとえ話をされます。しかし、そのたとえ話を聞いてどのくらいの人が理解することができたのでしょうか。この種を蒔く人は、イエス様ご自身のことですし、種とは【みことば】なのです。イエス様は、いろいろな人に対して一見無駄とも思えても、平等にみことばを宣べ伝えます。イエス様のこの平等さ、寛大さがイエス様の【愛】と言ってもいいでしょう。しかし、せっかくいただいたみことばを聞いた人たちの反応は、それぞれ違っていました。人々の中には、イエス様のみことばを聞かなくても十分生活ができる人や、自分の考えが正しいと思っている人、みことばのすばらしさの価値に気がつかない人、みことばの正しさは分かっても楽な生活に傾いてしまう人などがいました。彼らは、いずれもイエス様から頂いたみことばを生かすことができない人たちでした。しかし、イエス様のみことばを聞いて、それを自分のものとして行動や、祈り、生活に生かしていくひとは、100倍、60倍、30倍の実りを結ぶことができたのでした。

 私には、私が小学校5年生の頃からお世話になっていた神父様がいました。きっと、私がその神父様に出会うことがなかったなら私の修道者としての召命はなかったことでしょう。私は、その神父様から勉強の仕方、歌い方、生き方など、数えると切りがないほどのことを教えて頂きましたし、愛情をも頂きました。その神父様が、『聖パウロと聖ペトロの祝日』の日に肝臓がんのために78歳で亡くなられました。神父様の葬儀は、その教区のカテドラルで行なわれ、聖堂がいっぱいになるほどのたくさんの司祭、信徒が参列されました。司教様は、神父様を送り出す前に「この神父様は、いつも人のためやマリア様のためにお祈りをしていました。しかし、神父様が亡くなる前に初めて『自分のためにイエス様に祈りをしました』と言われたのです。その時、神父様は、ご自分がまもなく亡くなることを受け入れ、イエス様に祈られたのではないでしょうか。そして、ペトロがもっとも機嫌が良い日に亡くなられました。」とお話しされました。また、ある方は、「きっと、この葬儀に集まった人たちは、みんな『自分だけが一番この神父様に愛された』と思っているのではないでしょうか」とも言われていました。

 私は、この葬儀に参列した一人ひとりの中に、神父様を通して蒔かれたイエス様のみことばが実っているのではないか、と思ったのです。そして、神父様が接された方々の中に蒔かれたイエス様のみことばの種は、その人たちを通してさらに、別の人に蒔かれて行くのではないでしょうか。このみことばの種の連鎖が、イエス様が言われている【100倍、60倍、30倍の実り】なのではないでしょうか。イエス様が伝えられた、【天の国の秘義】とは、この実りを皆で共有できるすばらしさなのかも知れません。