「目からウロコ」の話
赤波江謙一神父のよもやまメール箱
今年、1月の初めに沖縄に行って来ました。正月休みが終わったあとの10、11、12日ですから、もちろん観光や遊びといった種類のものではありません。これまで5月、8月、9月と暑い季節に行ったことはありましたが、一月に行ったのは初めてで、真冬の東京と違ってとても暖かく、一足先に春を体験して得したような気分になりました。同じ季節で南北の違いを肌で感じたのですが、東京から遠い沖縄で、季節だけではなく、もっと違った世界のことを肌と心で、「おんなじだ!」とを実感したことがありました。
沖縄に行ったのは、キリスト教の超教派的なレベルで、今静かに広まりつつある信仰教育プログラム「アルファ・コース」キャンペーンのためで、アルファの紹介コースを、那覇バプテスト教会で、トレーニング・セミナーを、カトリック安里教会で開催しました。
押川寿夫那覇教区司教をはじめ、カトリック司祭、修道者、信徒を含む多くのキリスト教教派の人々が、紹介コースには二百人近く、トレーニング・セミナーには三百人近く参加されていました。
ロンドンのホーリー・トリニティー・ブロンプトン教会(英国国教会)で1971年に始まった信徒向けのこのコースは、今、世界中のキリスト教の中に急速な勢いで広まり、日本でもカトリックをはじめ多くの教派で、数年前から徐々に浸透しつつあります。英国国教会(聖公会)の司祭によって考案された「公教要理」のようなものですが、教義についての教育プログラムではなく、キリスト教の基本的なことについて、だれにでも分かるように導いてくれるとても素晴らしいプログラムです。「ALPHA」(アルファ)のAは、Anyone interested (興味ある人はだれでも参加できる)、Lは、Learning & Laughter (学びと笑い)、Pは、Pasta (食事を共にする)、Hは、Helping one another (互いに助け合う)、Aは、Ask anything (どんなことでも質問できる)という意味です。
私はかつて勤めていたカトリック新聞の仕事で、2002年10月に、ロンドンから大勢のスタッフを招き、400人以上の参加者(カトリックからは70人以上)を得て開催されたアルファ・ジャパン カンファレンスを取材してその素晴らしさを知り、2003年1月にアルファ・コースを受講して、その後、微力ながらアルファの普及に協力させていただくようになりました。
私はそれまで、取材関係でプロテスタント教会の方々とお付き合いする機会はありましたが、個人的な理由でプロテスタントの教会に行くということはありませんでした。ですから、最初アルファ・コースのためにプロテスタントの教会に行ったときには、参加者の中でカトリック信者は私一人ということもあって、少々緊張しました。でもコースが始まって、心づくしの夕食をいただきながら皆さんと歓談し、教材のビデオを観てキリストの生涯、十字架、復活、聖霊、祈り、人生などについて話しているうちに、いつか自分がカトリック司祭であること、ほかの人たちがプロテスタントの信者であることに、何の違和感も覚えていないのに気が付き、不思議な感じがしました。
やがて、アルファ事務局のスタッフの方々とも懇意になり、日本全国を巡るアルファ・キャンペーンに随行して、これまでの紹介コースでは「アルファの原則」について、トレーニング・セミナーでは「アルファの牧会(司牧)的ケア」について、これからアルファ・コースを受けたいという人、またはコースを主宰したいという人たちのために、自分がカトリックの司祭であると自己紹介した上で話をさせていただいてきました。
去年の7月に、沖縄での紹介コースで「アルファの原則」について話したのが最初で、その後、東京、仙台、と続き、今年になって再度沖縄を訪問したわけです。とっても驚いたのは私の話を聞いた皆さんの反応でした。話といっても、「アルファの原則」にしても「アルファの牧会的ケア」にしても、その内容は決まっていますから、だれが話しても同じなのです。今年、那覇バプテスト教会での「紹介コース」が終わったあと、どの教団かは存じませんが、一人の男性のプロテスタントの方が私のところに来て、「先生、今日は本当にありがとうございました。いやあ、驚きました。まさに目からウロコでした!」と、興奮さめやらぬ表情でこうおっしゃるのです。いきなり何ごとかと思いました。「何でしょう?」お尋ねすると、「私は、今日初めて分かりました。カトリックも、私たちと同じなんですね!」だと……。こっちがびっくりしましたよ。私は自分の担当個所である「アルファの原則」について、聖書を引用しながら、また自分の経験を交えた実例を用いながら少し分かりやすく話したのですが、それが彼にはカトリックの司祭の話とも思えないくらい(?)、自分たちの教団の中での話のように感じたのでしょうか。私は心の中で(「お前さんはこれまでカトリックをいったい何だと思っていたの?」)と思い、自分も目からウロコの思いで(「そう言うお前さんたちも我々と同じだったんだ?」)と思いながら、そんなことはおくびにも出さず、にこやかに、「そうでしたか、そりゃどうも、は、は、は!」と笑ってごまかしました。
話はそこで終わりませんでした。翌日、那覇教区司教館のあるカトリック安里(あさと)教会でのトレーニング・セミナーで「アルファの牧会的ケア」について話をし、セミナーが終わってホッとして、冷や汗を拭っていると、例の「目からウロコ氏」がまたやって来て、「いやあ、ほんとにありがとうございました。昨日と言い、今日と言い、先生のお話は、私の中でまるで『ベルリンの壁』が崩れたような衝撃でした」とおっしゃったのです。「目からウロコ」なんてもんじゃありませんぜ。昨日から考えていたセリフだったのか、言うに事欠いたのか、「ベルリンの壁の崩壊」にヒッテキするくらいの衝撃だったとは、いやはや……。最初の沖縄の時も東京の時も、冗談のように「カトリックを見直した」という感想を何度かお聞きして、どんなふうに「見直した」のだろうと、少し不安な思いもしてはいたのですが。カトリックはベルリンの壁か……。
カトリックは、ほかのキリスト教の教派の人たちからそんなに見られていたのかというのは、ちょっとショックでした。でもその反面、ほんの一部の人ではあっても、その壁を少しでも崩す役を果たせたのは、最近あったちょっと嬉しい出来事でした.
ちなみに、「アルファ・コース」の内容は、「キリスト教とは?」「イエスとは?」「イエスの死とは?」「確かに信じるには?」「聖書を読むには?」「神に祈るとは?」「神の導きとは?」「聖霊とは?」「「聖霊の働きとは?」「聖霊に満たされるには?」「悪に対抗するには?」「イエスを伝えるとは?」「神のいやしとは?」「教会とは?」「人生を最高に生きるには?」となっていて、コースの産みの親のニッキー・ガンベル司祭による各テーマのトークをビデオで視聴したあと、10人程度の小グループでディスカッションしていくというものです。トークは日本語に吹き替えられているので、内容は完全に理解できます。興味のある方は連絡してください。
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